第一章
 
八種の勁と弾性の掤勁

 太極拳は意を用いて拙力を用いないことが要求される。しかしながらそれは意を用いて勁を用いないということではない。なぜなら太極拳は八種類の勁から構成されているからである。この八つにはすべて放長する弾性がある為“力”とはよばれず“勁”とよばれるのである。これらの勁はそれぞれ名称が異なるが、実質的には一つ、つまり掤勁があるだけであり、その他七つは方向と作用が異なる為に便宜上呼び方を変えているだけである。よって太極拳は掤勁拳と呼ぶことも出来る。さて、第二の特徴の理解をさらに進める為、この八つの勁の内容を以下のように分析してみる。

1 全てが動いている状態で、掌が内側から外側へ纏絲する勁を掤勁と呼ぶ。

2 全てが動いている状態で、掌が外側から内側へ纏絲する勁を捋勁と呼ぶ。

3 左右の手で捋と掤を同時に交差させ、外側へ押し出す勁を擠勁と呼ぶ。

4 掌が下側に円を描きながら少し粘りつき離れない勁を按勁とよぶ。

5 両手を左右に交差させ前後に分かれる勁を采勁と呼ぶ。

6 捋と掤を巻き込んで(勁を?)蓄え、至近距離で突然身体を震わせてはじき出す勁を挒勁と呼ぶ。

7 腕が自分の制空圏の外にでてしまった場合、第二防御ラインである肘による掤勁を使って打つものを肘勁と呼ぶ。

8 肘が自分の制空圏の外にでてしまった場合、第三防御ラインである胴体部の掤勁で打つものを靠勁と呼ぶ。



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